これまで、
「あくび」「足を組む」「貧乏ゆすり」といった“無意識の動き”を通して、
身体が自らバランスを取るために働いていることを見てきました。
今回はその総まとめとして、
「姿勢」を通して、身体がどんな理由で今の形を選んでいるのかを見ていきます。
姿勢は「直す」ものではなく、「現れている」もの
姿勢というのは、意識で作るものではなく、
身体が今の状態を最も保ちやすいように選んだ“結果”です。
それを「正しい姿勢」に無理やり当てはめようとすると、
一見きれいに見えても、どこかにひずみが生まれます。
疲れてくると背中が丸くなる。
デスクワークが続くと、首や肩が前に出る。
フルマラソンを走り終えたランナーが、自然に前かがみになる。
これらはすべて、身体が内部の環境を守ろうとする反応です。
筋肉や内臓、神経系のバランスを保つために、
その瞬間いちばん効率のいい形を“選んでいる”。
姿勢は、水が地形に合わせて流れを変えるようなものです。
高いところから低いところへ、抵抗の少ない道を自然に選ぶ。
身体も同じで、今の姿勢はその人の体にとって一番楽に生きられる形です。
「猫背だから悪い」「姿勢が悪いから治そう」
そう決めつける前に、
なぜその形をとっているのかを見つめる必要があります。
もちろん、ピラティスのように、
普段使われにくい筋肉を目覚めさせたり、
身体の感覚を取り戻したりすることには大きな意味があります。
ただ、姿勢そのものを“意識で操作して直す”という発想には、限界があるのです。
身体が今の形を“選ぶ”理由
背中を丸めることも、肩を前に出すことも、
その瞬間の身体にとっては「守りの姿勢」。
内臓の疲れ、古いケガ、神経の緊張など、
さまざまな要素が関わり合いながら、
身体は自分を守るように形を変えています。
だから、無理に「正そう」とすると、
守ってきたバランスを崩し、
結果的に別の場所に負担がかかることもあるのです。
20年越しの尾てい骨の記憶が、姿勢に現れていた
29歳の男性のケースです。
初回のカウンセリングでは、
「座っていると首が詰まる」「呼吸が浅くなる」と話していました。
検査を進める中で、8歳の頃に骨折した尾てい骨が影響していることが分かりました。
それが筋膜を通じて腰や背中の動きを制限し、
結果的に首の詰まりや呼吸のしづらさにつながっていたのです。
本人は「まさか昔のケガが関係しているとは思ってもいなかった」と驚いていました。
施術では、尾てい骨の調整、頭蓋骨の調整、内臓の調整を中心に行いました。
姿勢を直接操作するような施術はしていません。
それでも、初回から呼吸が驚くほど楽になり、
回を重ねるごとに「デスクワーク中の姿勢がすごく楽になった」と変化を実感。
「体が今までと全く違ってきている」と本人も話すほど、
見た目の姿勢にも明らかな変化が出てきました。
草を刈るか、根を抜くか ― 原因に近づくということ
背中が丸いから背筋を伸ばす。
骨盤が歪んでいるから矯正する。
そうした方法も一時的な効果はありますが、
本質的には「草を刈っているだけ」です。
根(原因)が残ったままでは、時間が経てばまた同じ形になります。
ただし、原因は人によって本当にさまざまです。
古いケガが関係している人もいれば、
内臓の疲れや頭蓋骨のバランスが関係している場合もあります。
どこに“根”があるのかを見極めながら、
その人の身体に合わせて整えていくことが大切です。
“戻る”のではなく、“再適応している”
施術を重ねていく中で、
一時的に別の場所に不調を感じることもあります。
それは“戻っている”のではなく、
身体が新しいバランスに再適応している状態。
今まで使われていなかった筋肉が働き始めたり、
血液が流れにくかった場所に血が通い始めたりすることで、
一時的に違和感が出ることもあります。
20年かけて築かれたバランスを、
1回で完全にリセットすることはできません。
けれど、原因に近い部分が整えば、
時間とともに身体は安定する姿勢を見つけていきます。
姿勢とは、身体が選んだ最適解
10年以上、整体の現場にいて感じるのは、
身体は常に、自分を守るために最善を尽くしているということ。
だからこそ、
「悪いクセ」や「悪い姿勢」を力で直すのではなく、
「なぜその形を選んでいるのか?」を見つめることが大切です。
姿勢は努力で作るものではありません。
身体が整った“結果として現れるもの”です。

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