ほぐせばいいとは限らない — 筋肉の固さの仕組み

肩こりや腰痛で「筋肉が固いですね」「ほぐしましょう」と言われることは多いと思います。

でも、本当に「固さ=悪者」なのでしょうか?

筋肉は、ただ無意味に固くなるわけではありません。

僕は臨床を重ねる中で、その固さには身体なりの理由や意味があると実感しています。

筋肉の固さの役割

身体はそのときどきで「全身のバランスを保つこと」と「弱っている部分を守ること」を切り替えながら、最も必要なところを守ろうとしています。

つまり筋肉の固さは、無意味に起こっているのではなく、状況に応じた身体の働きなのです。

大きく分けると、次のような役割があります。

脳や神経を守る固さ

たとえば、体が疲れて丸まっているときに首の筋肉が固くなるのは、脳に血流を届け続けるため。

また、腰の神経が圧迫されそうになると腰まわりが緊張してブレーキをかけます。

これは「命を守るために、自由な動きを犠牲にしてでも優先される働き」です。

臓器や関節を守る固さ

胃腸が疲れているときにはお腹まわりが硬くなり、内臓にこれ以上の負担をかけないようにします。

膝が不安定な人では、太ももが突っ張って関節を固定し、壊れないように守ります。

これは「長期的に身体を壊さないための働き」です。

重力下で姿勢を保つ固さ

人は常に重力を受けながら立ち、歩き、動いています。

そのため背中側の姿勢維持筋などが緊張し、重力に潰されずバランスを取れるように働きます。

これは「倒れないために必要な働き」であり、他の役割と並行して常に調整されています。

このように、筋肉の固さは単純に「悪いもの」ではなく、その瞬間に身体が何を最優先しているかを映し出すサインなのです。

先日の出来事

46歳の男性で、デスクワーク中に20年来ずっと首と肩のこりが気になっていた方がいました。

毎週マッサージや整体に通わないと辛くて仕方なかったそうです。

でも、僕の施術を3回ほど受けるうちに「首肩のコリが全く気にならなくなった」と話してくれました。

実際に調整したのは頭蓋骨と肝臓、それから小学生の頃に骨折した右手首だけ。

首や肩を揉んだりストレッチしたりは一切していません。

まとめ

筋肉が固くなるのは「ほぐさなければいけない悪者」だからではなく、身体がそのときに必要なことを守ろうとしている働きです。

もちろん、マッサージにはリラックスや気分転換といった良さがあります。

精神的にゆるむことが身体にプラスに働くことも多いので、それ自体が無意味というわけではありません。

ただ、固さの背景にある「なぜそうなっているのか」を理解することが、根本的な改善への一歩になるのだと感じています。

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