「あくび=酸素補給」説は間違い? ー 脳が整う瞬間

「ふぁ〜……」

誰もが一日に何度か、自然に出てしまうあくび。
眠いとき、退屈なとき、緊張がほぐれたとき――。

でも、なぜ私たちは“あくび”をするのでしょうか?

子どもの頃、「脳に酸素を送るため」と習った人も多いと思います。
けれど、近年の研究ではその説明は正確ではないことが分かってきています。

深呼吸では代わりにならない理由

もし本当に酸素を取り込みたいだけなら、深呼吸をすれば十分です。

それでも私たちは、わざわざ大きく口を開け、涙がにじむほど顔や喉の筋肉を総動員します。

これは単なる呼吸ではなく、神経と筋肉を巻き込んだ全身の動きだからです。

まるでパソコンが一度フリーズしたあと、再起動すると一気に動作が軽くなるように。

あくびもまた、身体が小さな「再起動」をかけているようなものなのです。

あくびは「脳を冷やし、血流を整える」

近年の研究では、あくびが脳の温度や血流のバランスを調整する反応である可能性が示されています。

脳は活動が高まると熱を持ちますが、あくびの直後に脳温がわずかに下がるという報告があります。

顔や首まわりの血流が変化し、頭部を冷やす“クーリングシステム”として働いているのです。

また、fMRIなどの観察では、あくびの前後で脳血流の分布が変化することも確認されています。

あくびの動作による一時的な血圧上昇が、使われていなかった領域へ血液を再配分し、
酸素や栄養の循環を整える働きをしていると考えられます。

その結果、「頭がスッキリした」「集中力が戻った」と感じることが多いのです。

いわば、脳を冷やしながら血流を入れ替えるリフレッシュ動作。

エンジンの熱を逃がしながら燃料を入れ替えるように、
あくびは脳を“効率の良い状態”へと戻しているのかもしれません。

筋肉と神経の再調整メカニズム

あくびでは、顔・首・肩・背中の筋肉が一斉に動きます。

このとき短時間ながら強い伸展反射(ストレッチ反応)が起こり、
その後に全身の緊張がふっと緩むことが分かっています。

まるで、ピンと張っていた糸が一瞬ゆるむような感覚。

身体の内部では、交感神経(緊張モード)から副交感神経(休息モード)への切り替えが進みます。

動物でも人でも、あくびの直後に心拍や血圧が落ち着く傾向があり、
これは神経と筋肉が協調してバランスを取り戻しているサインといえます。

まとめ:あくびは、身体が整う瞬間

あくびは眠気のサインではなく、
脳の温度・血流・神経バランスを整えるための自然な調整プログラムです。

こうした一連の反応は、
私たちの身体が、常に変化する環境や状態に合わせて
自らを最適化しようとする仕組みの一部と考えられています。

次にあくびが出たときは、
「いま、身体がリセットしてくれているんだな」と感じながら、
その自然な動きを少しだけ意識してみてください。

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