人の身体は、一見するととても繊細で壊れやすいように思えます。
少し疲れただけで動けなくなったり、体調が崩れると回復に時間がかかったり。
「身体って弱いな」と感じる瞬間は誰にでもあると思います。
でも実は、身体は私たちが想像しているよりもずっと賢く、
“冗長性(=予備の仕組み)” を多く備えています。
その代表的な例が、
臓器を一部切除しても生きていけるように作られていること。
手術の現場で感じた「身体の底力」
先日、医師の友人が
「胆嚢摘出の手術を執刀したときのこと」 を詳しく話してくれました。
胆嚢摘出は腹腔鏡という方法で行われます。
お腹に小さな穴を 3箇所 開けて、
- 1つの穴から細いカメラを入れ、
- 他の2つの穴から小さなハサミや専用器具を入れ、
- モニターを見ながら 胆嚢だけを丁寧に切り取る
数センチの穴から体内の臓器を正確に取り出すという技術。
その精密さに、あらためて医学の進歩を感じました。
同時に、
臓器をひとつ失っても生命を維持できる身体の仕組みにも
強い興味が湧きました。
僕のスタンス:できる限り“切らずに済む身体”をつくる
もちろん、手術が必要な場面があることは前提として理解しています。
そのうえで僕は、
可能であれば臓器はできるだけ残してあげた方がいい と考えています。
なぜなら、臓器をひとつ失うと、
その役割を他の臓器が引き受けることになり、
その時に問題がなくても、長期的には負荷が偏りやすくなる
と感じているからです。
だから僕の施術では、
内臓へのアプローチを行うこともあります。
触診で負荷がかかっている内臓を見極め、
その臓器への 血流を促して負担を軽減させる というものです。
臓器が少しでも働きやすくなるようサポートすることで、
身体全体のバランスが整いやすくなります。
切除しても生きられる臓器の例
● 扁桃腺 ― 入口の免疫の番人
役割:細菌・ウイルスを最初に捉える
取っても生きられる理由:周囲のリンパ組織が代わりを担う
長期的影響:医学的にはほぼ問題なし
● 盲腸(虫垂) ― 腸内細菌の避難場所
役割:腸炎などで腸内細菌が減ったときの“再建拠点”
取っても生きられる理由:消化に直接関わらない
長期的影響:腸内環境の回復が少し鈍る程度
● 胆嚢 ― 脂質の消化を助けるタンク
役割:胆汁をためて、脂質の多い食事に合わせて放出
取っても生きられる理由:胆汁は肝臓が作り続ける
長期的影響:脂質で下しやすい、消化のクセが変わりやすい
その他にも以下のような臓器が冗長性を持ちます。
- 脾臓(血液の調整:肝臓・骨髄が代償)
- 副腎(片側)(片側が弱ってもホルモン調整が可能)
- 片腎・片肺(もともと余力が大きい臓器)
臓器を失っても生きられる本当の理由
臓器を切除したあとも生命を維持できるのは、
他の臓器がその役割を引き受けてくれるからです。
胆嚢の調整は肝臓と腸が担い、
片腎になっても腎臓は高い代償能力を発揮し、
盲腸がなくても腸全体で十分に補えます。
身体は、
生命に必要な働きが途切れないよう、
自然に役割を再配分できる仕組み を持っています。
補足:手術痕が“離れた部位の症状”に影響することがある
施術の現場では、
なかなか改善しなかった症状の背景に
過去の手術痕が関わっていたケース を何度も見てきました。
身体は、筋膜というネットワークで全身がつながっています。
そのため手術痕のような小さな変化でも、
時間をかけて別の部位に影響が広がることがあります。
● 10年以上続いた膝の痛み
昔の腹腔鏡手術の痕によってお腹の筋膜の滑走が低下し、
全身につながる筋膜を介して膝に負担がかかりやすい状態になっていました。
その手術痕を調整することで、10年続いていた膝の痛みは改善しました。
● 10年前の糸リフト後から続いた耳鳴り
糸リフトで固定していた頬の3箇所が筋膜の滑走を低下させ、
結果的に頭部の血流に影響して耳鳴りが起きていた ケースです。
頬の3箇所を調整することで、耳鳴りは改善していきました。
まとめ:身体は“連動するネットワーク”で働いている
現代医学は驚くほど進歩しています。
小さな穴から臓器を摘出したり、血管内で治療したり、
身体の構造そのものを大きく変えることもできる時代です。
一方で、身体の仕組みには
まだ解明されていない領域も多く残っています。
たとえば、がんの本当の発生メカニズムにも複数の仮説があり、
決定的な答えにはまだ届いていません。
自律神経や免疫とストレスの関係も、
部分的には分かっていても“全容の解明”とは言えません。
私はその理由のひとつは、
身体が「部品の集まり」ではなく
“あらゆる組織が連動するネットワーク”として
働いているからだと思っています。
精神的なストレスが脳のホルモン分泌を変え、
その刺激が神経を介して筋肉の緊張を引き起こしたり、
今回紹介したように、
昔の手術痕の癒着が筋膜を通じて離れた場所に影響したりする。
身体は常に、筋膜・神経・内臓・血流が
互いに連絡を取り合いながら働いている。
その連鎖の広さと複雑さが、
まだ理解されていない領域を生み続けているのだと感じています。
だからこそ、身体に起きる変化を
“部分”だけで判断しない視点を持つことが、
これからますます大切になってくるのだと思っています。

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